これが松山公演のパンフレット座談会 5-『マハズレ』はどうやって姿を現したのか


5―――『マハズレ』はどうやって姿を現したのか

佐々木 そもそも、うちの姉ちゃんの話がしたいって言い出したのは俺なんだよね。そこは俺が決めてみんなが乗ってくれた。真史を決めたのはミユさんだったっけ?

樋口 そ。私が、琢さんと何か創る時に、言葉のないものをやってみたいって言うて、

佐々木 言ってた。

樋口 その時には必ず真史さんがいると思ったの。無言でも物語れる人。

佐々木 そうだ。もともとお姉ちゃんのモノローグ劇をやりたいって俺が言って、で、そしたら「琢さん、嫌かもしれないけど、言葉失くしていい?」ってミユさんに言われて、

樋口 ああ、そやそや。

佐々木 全然いい、面白そうじゃないすかって。

黒田 ということは、それぞれやりたいこと持ちこんでるってことや。

樋口 そうなの。

黒田 実は、私も、別なるものを持ちこんでいて。

樋口 何?

黒田 年末にね、おじいちゃんがね、体調が悪くてお見舞いに行ったら、もうね、命の灯が消えそうな状態を見て、結構それが衝撃で、それと年始にイスラム国の事件あったじゃない。うーん、命、って、なんなんだろうって、思って。政治的なことのために命が粗末にされている。命について、なんかやらんとあかんって思っていたフシがあって、琢の個人的な話やねんけど、自分の興味を持ちこんだの。おじいちゃんの、あの身体をやってみたいなと思ってそれを持ちこんでいるんです。

樋口 あ、でもそれがあるんやったら、牛乳差し出されたあとのあれはあったほうがいいと思った。

黒田 え、なんでなんで?

樋口 えとね、あれって簡単なフリやん。あれを全身全霊でやると、命ってものが見えてくるんじゃないかなと思う。私的にはね、大変エロティックな作品に仕上がっていると思っているのです。

黒田 そうなん!?

佐々木 エロいエロい。

黒田 露出が多いからちゃうん?

佐々木 エロスを感じる。

黒田 あんまり言われたことないわ。

樋口 やっぱり牛乳がね。

黒田 それは違うエロスやろ!

樋口 あれがね、私には生命にも見えるし、母親の母乳にも見えるし、やっぱり精子にも見えるし、それを、飲み干すのが真史さんしかおらんっていうのが、またエロティック。

黒田 みーちゃんって何かを見て物語とか、意味とか捉える能力に長けてるんやけど、今回は私らはそれを封じ手にしてるよね。

樋口 あ、それは、封じ手のほうがいい。でないと、私は意味をイロイロ置いていってしまうから。そうすると、真史さんの身体より意味の方が物語っていくから。

佐々木 封じるってほど封じ手もないなと思うけど?

黒田 ホント?

樋口 いや、私は意味をつけていいなら、たぶんもっと持ちこむと思う。

佐々木 例えば?

樋口 真史さん(の踊り)にもっと意味を求めると思う。そうすると、説明する身体になっちゃう。

佐々木 牛乳はミユさんが持ちこんだものですね。

樋口 なんかね、ポイントをね。実はあの電気の傘も説明。

黒田 何の説明?

樋口 家族、食卓、家の灯り。これとテーブルなかったら、どこのナンの話か分からヘン。最低限のものはいるかな。

佐々木 あれいい。

樋口 ほんまは一回くらいあれ揺れたい。

黒田 (以前一緒に創ったお芝居で)揺らしたよね?

樋口 私、灯り揺れるの大好きやねん。不安定になるやろ。

黒田 それやったら私より琢が揺らしたらええんちゃうん?

佐々木 揺らしていいなら俺揺らしたい。

樋口 マジで!? じゃ、次の稽古で揺らしてみ?

黒田 私が動いてヘンに揺らすより、琢が作為的に。

佐々木 あ、作為ね! 

樋口 一発目のインタビューあるやん。

佐々木 ああ。あの時。

樋口 揺れると不安定が見えると思う。

佐々木 こういう瞬間、今まさに。3人がこれいいじゃんってなる瞬間。

黒田 ああ、なるほど。

佐々木 こうやって出来ていくっていう。

樋口 それいいね、が積み重なると。

佐々木 もともと最初のコンセプトそれだったね。3人がピンときたら、

樋口 やってみよ! って感じなんですけどどうですかね、桜井くん。

桜井 勉強になります。

全員 (笑)

桜井 いい音創ります。

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